脂質異常症の栄養管理、診断基準と食事のポイント

臨床栄養学脂質異常症食事療法国家試験

脂質異常症の栄養管理、診断基準と食事のポイント

健診でLDLコレステロールが高いと指摘された患者さんから「何を食べたらいいですか」と聞かれたとき、中性脂肪が高い人と同じ指導をしていませんか。脂質異常症は、LDL-C、HDL-C、TGのどの値が基準を外れているかによって、食事のポイントが大きく変わります。

脂質異常症の診断基準と分類

脂質異常症は、血液中の脂質バランスが崩れた状態を指します。診断基準は以下の通りです。

  • 高LDL-C血症:LDLコレステロール140mg/dL以上
  • 低HDL-C血症:HDLコレステロール40mg/dL未満
  • 高TG血症:中性脂肪(トリグリセリド)150mg/dL以上(空腹時)

この3つの指標はそれぞれ異なる意味を持ちます。LDL-Cは動脈硬化の主要リスク因子で、血管壁にコレステロールを運び込むため「悪玉」と呼ばれます。一方、HDL-Cは血管壁から余分なコレステロールを回収する働きがあり、低すぎると動脈硬化が進みやすくなります。TGは食後に上昇しやすく、高値が続くと脂肪肝や膵炎のリスクにつながります。

脂質異常症は動脈硬化を進行させ、虚血性心疾患や脳卒中の原因となるため、早期からの管理が重要です。

高LDL-C血症の栄養管理

LDLコレステロールが高い場合、まず見直すべきは飽和脂肪酸とコレステロールの摂取量です。

飽和脂肪酸は、肉の脂身やバター、生クリームなどの動物性脂肪に多く含まれ、肝臓でのコレステロール合成を促進します。摂取エネルギーの7%未満に抑えることが推奨されています。具体的には、脂身の多い肉を避け、鶏肉なら皮を取る、調理に使う油脂を控えめにするといった工夫が有効です。

コレステロールは体内で約70-80%が合成されますが、食事からの摂取も無視できません。卵黄や魚卵、内臓類に多く含まれるため、これらを毎日大量に食べる習慣がある場合は見直しが必要です。ただし、卵は良質なたんぱく質源でもあるため、極端に制限するのではなく、1日1個程度を目安にバランスを取ります。

逆に積極的に摂りたいのが、食物繊維です。特に水溶性食物繊維は、腸内でコレステロールや胆汁酸を吸着して排泄を促し、血中LDL-Cの低下に寄与します。大麦、オーツ麦、海藻類、こんにゃく、果物などに豊富です。1日20g以上の食物繊維摂取を目標にします。

植物ステロールを含む食品(大豆製品、ナッツ類)も、コレステロールの吸収を阻害する作用があります。

高TG血症の栄養管理

中性脂肪が高い場合、食事のポイントは高LDL-C血症とは異なります。TGは糖質やアルコールの過剰摂取、肥満によって上昇しやすいためです。

まず重要なのが糖質の質と量の見直しです。単純糖質(砂糖、果糖ブドウ糖液糖など)は肝臓で中性脂肪に変換されやすいため、清涼飲料水や菓子類、果物の摂りすぎに注意します。ご飯やパンなどの主食も、適量を守ることが大切です。糖尿病の食事療法と同様に、炭水化物を50-60%エネルギーに抑え、食物繊維を十分に摂ることで血糖値の急上昇を防ぎます。

アルコールは7kcal/gのエネルギーを持ち、肝臓での中性脂肪合成を促進します。高TG血症では禁酒または節酒が原則です。

肥満がある場合は、エネルギー制限による減量が最優先です。内臓脂肪が減ると、TGは比較的速やかに改善します。標準体重×20-25kcal/日を目安に、たんぱく質は標準体重×1.0-1.2g/kgを確保して筋肉量を維持しながら減量を進めます。

高TG血症では、n-3系脂肪酸(EPA・DHA)の摂取が推奨されます。青魚(サバ、イワシ、サンマなど)に豊富で、肝臓での中性脂肪合成を抑制し、TGを低下させる作用があります。週に2-3回は魚を食べる習慣をつけると良いでしょう。

n-3系脂肪酸の位置づけと使い分け

n-3系脂肪酸は、高TG血症だけでなく、高LDL-C血症にも有用です。ただし、その効果には違いがあります。

高TG血症では、EPAやDHAが肝臓でのVLDL(超低比重リポたんぱく質)合成を抑制し、TGを直接低下させます。この効果は比較的強く、医薬品としても使用されています。

一方、高LDL-C血症では、n-3系脂肪酸の主な役割は抗炎症作用と抗血栓作用です。LDL-Cそのものを大きく下げる効果は限定的ですが、動脈硬化の進行を抑え、心血管イベントのリスクを減らす可能性が示されています。

つまり、高TG血症では「TGを下げるため」にn-3系脂肪酸を積極的に摂り、高LDL-C血症では「動脈硬化予防のサポート」として位置づけるのが適切です。

n-3系脂肪酸は酸化しやすいため、新鮮な魚を選び、揚げ物よりも刺身や焼き魚で摂る方が効率的です。ビタミンEなどの抗酸化ビタミンと一緒に摂ることで、過酸化を防ぐこともできます。

低HDL-C血症と複合型への対応

HDLコレステロールが低い場合、単独では食事療法の効果が限定的ですが、運動療法との組み合わせが有効です。有酸素運動はHDL-Cを上昇させる効果があります。

食事面では、トランス脂肪酸(マーガリン、ショートニングを使った加工食品)を避けること、適正体重を維持すること、禁煙することが基本です。アルコールは少量であればHDL-Cを上げる作用がありますが、過剰摂取は中性脂肪を上げるため、節度が必要です。

高LDL-C血症と高TG血症が併存する複合型の場合、両方のポイントを組み合わせます。飽和脂肪酸とコレステロールを控えつつ、糖質とアルコールも制限し、食物繊維とn-3系脂肪酸を積極的に摂る、というバランスの取れた食事が求められます。

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まとめ

脂質異常症の栄養管理は、LDL-C、HDL-C、TGのどれが問題かによって食事指導の重点が変わります。高LDL-C血症では飽和脂肪酸とコレステロールの制限、食物繊維の増加が中心です。高TG血症では糖質とアルコールの制限、減量、n-3系脂肪酸の摂取が鍵になります。患者さんの検査値と生活習慣を丁寧に聞き取り、優先順位をつけた指導を心がけましょう。

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