CKDの栄養管理、ステージ別のたんぱく質・塩分・カリウム制限
CKDの栄養管理、ステージ別のたんぱく質・塩分・カリウム制限
慢性腎臓病(CKD)の患者さんを担当するとき、「いつからたんぱく質制限を始めるべきか」「透析導入後にたんぱく質を増やす理由は何か」といった疑問を抱いたことはありませんか。腎機能が低下すると、窒素代謝産物の排泄能力が落ちるため、ステージに応じた段階的な栄養管理が必要になります。今回は、CKDのステージ別に、たんぱく質・塩分・カリウム制限の考え方を整理します。
CKDのステージ分類とGFR
CKDは、GFR<60mL/分/1.73m²、または腎障害(特に蛋白尿)が3カ月を越えて持続する状態を指します。GFRは腎臓の濾過機能を示す指標です。日本腎臓学会のエビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023では、GFR区分(G1〜G5)と蛋白尿区分(A1〜A3)、原疾患を合わせて重症度を評価します。食事療法の基準は、日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」です。なお、この基準は2026年2月に改定案が公表されており、2026年10月時点で正式版は刊行されていません。正式版が出たら、この記事の数値は見直します。
- G1: GFR≧90(正常または高値。尿たんぱくなど腎障害あり)
- G2: GFR 60〜89(正常または軽度低下)
- G3a: GFR 45〜59(軽度〜中等度低下)
- G3b: GFR 30〜44(中等度〜高度低下)
- G4: GFR 15〜29(高度低下)
- G5: GFR<15(高度低下〜末期腎不全。透析導入を検討)
ステージG3a以降で、たんぱく質制限を含む本格的な食事療法が必要になります。
ステージ別のたんぱく質制限
G1〜G2:制限は不要、質を重視
GFRが60以上の段階では、たんぱく質制限は基本的に不要です。ただし、糖尿病性腎症など原疾患によっては、早期から血糖管理や血圧管理が重要になります。この時期は、良質なたんぱく質(必須アミノ酸バランスの良い動物性たんぱく質)を適量摂取し、過剰摂取を避ける程度で構いません。
G3a:0.8〜1.0g/kg標準体重/日
GFR 45〜59(G3a)では、たんぱく質を0.8〜1.0g/kg標準体重/日に制限します。体内でたんぱく質が代謝されると、尿素などの窒素代謝産物が生成されます。腎機能が低下すると、これらの老廃物を十分に排泄できなくなり、血中に蓄積して尿毒症症状を引き起こすため、たんぱく質摂取量を減らすことで腎臓への負担を軽減します。
ただし、制限しすぎると低栄養やサルコペニア(筋肉量減少)のリスクが高まります。サルコペニアの予防・改善には、1.0g/kg/日以上のたんぱく質が有効と考えられていますが、CKDのたんぱく質制限とは両立しにくくなります(日本腎臓学会の提言)。血清アルブミンや体重の推移を確認しながら、個別に調整することが大切です。
G3b〜G5(透析導入前):0.6〜0.8g/kg標準体重/日
GFRが45未満(G3b以降)になると、さらに厳格な制限が必要です。0.6〜0.8g/kg標準体重/日を目安に、必須アミノ酸を効率よく摂取できる良質たんぱく質(卵、魚、肉、大豆製品)を中心にします。エネルギー不足に陥ると体たんぱく質が分解され、かえって窒素代謝産物が増えるため、エネルギーは十分に確保します(25〜35kcal/kg標準体重/日)。
海外では、ケト酸製剤を併用した超低たんぱく食の報告がありますが、ケト酸製剤は国内では発売されていません。わが国では、低たんぱく質特殊食品を積極的に使って、たんぱく質制限とエネルギー確保を両立させます。
透析導入後:0.9〜1.2g/kg標準体重/日へ増量
透析を開始すると、たんぱく質摂取量は一転して増やします。血液透析(HD)では、透析膜を通じて低分子量のたんぱく質やアミノ酸が失われます。また、透析そのものが異化亢進状態を招くため、たんぱく質を0.9〜1.2g/kg標準体重/日(血液透析・腹膜透析とも)に増やさないと、低栄養や筋肉量減少が進行します。
透析患者は、透析によって窒素代謝産物を除去できるため、たんぱく質制限を緩和できます。むしろ、十分なたんぱく質を摂取して栄養状態を維持することが、生命予後やQOL向上につながります。
塩分制限:全ステージで6g/日未満が基本
CKD患者では、腎臓のナトリウム排泄能力が低下しているため、塩分摂取が過剰になると体液貯留・浮腫・高血圧を引き起こします。高血圧は腎機能をさらに悪化させる悪循環を生むため、全ステージを通じて食塩6g/日未満を目標にします。ただし、3g/日未満の過度な制限は推奨されていません。
ナトリウム1g=食塩約2.54gです。食塩相当量(g)=ナトリウム(mg)×2.54÷1000という換算式を覚えておくと、食品表示からの計算がスムーズになります。日本人(20歳以上)の平均食塩摂取量は9.6g/日(令和6年国民健康・栄養調査)なので、6g未満は相当な減塩が必要です。
減塩のコツとしては、だし(昆布・かつお節)の旨味を活用する、香辛料や酢で風味をつける、醤油やソースは「かける」より「つける」などがあります。加工食品(ハム・ソーセージ・漬物・インスタント食品)は塩分が多いため、頻度を減らすよう指導します。
透析患者では、透析間の体重増加(水分貯留)を抑えるため、塩分制限がさらに重要になります。塩分摂取が多いと喉が渇き、水分摂取が増えて体重増加につながり、透析時の除水量が増えて心臓への負担が大きくなるためです。
カリウム制限:G3b以降で必要に応じて制限
カリウムは細胞内液の主要な陽イオンで、正常な心筋の興奮伝導に欠かせません。健常者では、過剰なカリウムは腎臓から速やかに排泄されますが、腎機能が低下すると排泄能力が落ち、高カリウム血症のリスクが高まります。高カリウム血症は致死的な不整脈を引き起こす可能性があるため、慎重な管理が必要です。
G3a以前:通常は制限不要
GFRが45以上であれば、カリウム制限は通常不要です。野菜や果物の画一的な制限は勧められず、適度に摂取することが高血圧予防に役立ちます。
G3b以降:G3bは2,000mg/日以下、G4〜G5は1,500mg/日以下
GFRが45未満になると、血清カリウム値の上昇に注意が必要です。目標はG3bで2,000mg/日以下、G4〜G5で1,500mg/日以下で、血清カリウム値を見ながら必要に応じて制限します。野菜や果物、芋類にカリウムが多く含まれるため、以下の調理法で減らします。
- 水にさらす:野菜を細かく切って水に10〜15分さらすと、カリウムが水に溶け出します。
- 茹でこぼす:水にさらす・茹でこぼすことで、カリウムを調理前より10〜40%程度減らせます(半分以下にはなりません)。栗・枝豆・とうもろこし・かぼちゃなど、ほとんど減らない食品もあります。
- 果物は缶詰を活用:缶詰の果物はシロップにカリウムが溶け出しているため、シロップを捨てれば生の果物より低カリウムです。
血液透析ではカリウム2,000mg/日以下が目安で、保存期のG4〜G5(1,500mg/日以下)より緩やかです(たんぱく質を増やすため)。腹膜透析では原則として制限せず、高カリウム血症がある場合に血液透析と同様に制限します。ただし、制限しすぎると野菜不足で便秘や食物繊維不足を招くため、個別の血清カリウム値を見ながら調整します。
リン制限と貧血管理も忘れずに
CKDでは、たんぱく質・塩分・カリウム以外にも、リン制限や貧血管理が重要です。
リン制限:たんぱく質と連動
リンはたんぱく質を多く含む食品(肉・魚・乳製品)に豊富なため、たんぱく質制限を行うと自然にリン摂取も減ります。ただし、加工食品に添加されるリン酸塩は吸収率が高く、注意が必要です。腎機能低下によりリンが蓄積すると、カルシウム・リン代謝異常を起こし、二次性副甲状腺機能亢進症や血管石灰化のリスクが高まります。
貧血管理:エリスロポエチン不足と鉄・葉酸・ビタミンB12
腎臓は造血ホルモンであるエリスロポエチンを産生します。CKDが進行すると、エリスロポエチンの分泌が低下し、腎性貧血を来します。貧血が進むと倦怠感や息切れが強まり、QOLが低下します。貧血に鉄欠乏を伴う場合は、鉄剤の投与が推奨されています。また、葉酸やビタミンB12が不足すると巨赤芽球性貧血(大球性貧血)を来すため、これらの栄養素も確保します。
aiyolabで聞いてみた
CKDのステージ別栄養管理について、aiyolabのAIチャットに質問すると、日本腎臓学会のCKD診療ガイドや食事摂取基準2025を根拠に、具体的な制限量や調理法の工夫を教えてくれます。「G3bでカリウム制限が必要な理由は?」「透析導入後にたんぱく質を増やす根拠は?」といった疑問にも、出典つきで回答が返ってくるため、栄養指導の下準備やレポート作成に役立ちます。
まとめ
CKDの栄養管理は、ステージに応じて段階的に制限を強化していきます。G3a以降でたんぱく質制限を開始し(G3aは0.8〜1.0、G3b以降は0.6〜0.8g/kg標準体重/日)、透析導入後は逆に0.9〜1.2g/kg標準体重/日に増量します。塩分は全ステージで6g/日未満、カリウムはG3bで2,000mg/日以下、G4〜G5で1,500mg/日以下が目標です。腎機能の低下に伴い、窒素代謝産物やカリウムの排泄能力が落ちるため、食事療法で腎臓への負担を減らしつつ、低栄養やサルコペニアを防ぐバランスが求められます。血清アルブミンや体重、血清カリウム値などのモニタリングを通じて、個別に調整していくことが大切です。