大量調理施設衛生管理マニュアルとHACCP、押さえたいポイント
給食施設で働く管理栄養士にとって、大量調理施設衛生管理マニュアルは実務の基盤であると同時に、国家試験でも扱われるテーマです。特に温度や時間の数値は、現場でも試験でも正確に覚えておく必要があります。ここでは、特に押さえたいポイントに絞って解説します。
大量調理施設衛生管理マニュアルの適用範囲
このマニュアルは、同一メニューを1回300食以上または1日750食以上提供する大量調理施設に適用されます。健康増進法で定める特定給食施設(1回100食以上または1日250食以上)とは基準が異なるため、混同しないよう注意が必要です。
国試では「1回100食以上」「1日500食以上」といった誤った数値を選択肢に混ぜてくることがあります。300食と750食という数字を正確に覚えておきましょう。
食品衛生法の改正により、2021年6月から原則としてすべての食品等事業者に、HACCPに沿った衛生管理が制度化されました(小規模な事業者は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」)。大量調理施設衛生管理マニュアルは、HACCPの概念に基づいて、調理過程で守るべき重要な管理事項を定めたものです。
加熱温度の基準:75℃1分間と85℃90秒間
加熱調理における中心温度の基準は、大量調理施設衛生管理マニュアルで最も重要な数値の一つです。
原則として、加熱調理食品は中心温度75℃で1分間以上加熱することが求められます。この基準により、サルモネラ属菌などの主要な食中毒菌を死滅させることができます。
ただし、二枚貝などノロウイルス汚染のおそれがある食品については、85℃~90℃で90秒間以上の加熱が必要です。ノロウイルスは熱に対する抵抗性が高いため、より厳しい基準が設定されています。
国試では「75℃で30秒」「80℃で1分間」といった微妙に異なる数値を選択肢に並べてきます。75℃1分間、85℃90秒間という組み合わせを正確に記憶しておくことが重要です。
温度管理が不適切な場合、細菌の増殖により食中毒リスクが高まります。原材料の保管温度は食品ごとに定められていて(食肉は10℃以下、生鮮魚介類は5℃以下、冷凍食品は-15℃以下など)、これらの基準とあわせて、調理工程全体での温度管理が求められます。
保存食の管理基準
食中毒が発生した際の原因究明のため、保存食の管理は、マニュアルで定められた重要な事項です。
保存食は、原材料および調理済み食品を食品ごとに50g程度、-20℃以下で2週間以上保存することが定められています。この3つの数値がセットで問われることが多いため、まとめて覚えておきましょう。
「-15℃以下」「1週間以上」「100g以上」といった類似の数値を選択肢に混ぜてくるパターンが典型的です。保存食の温度基準(-20℃以下)は、通常の冷凍保存(-15℃以下)より厳しい点に注意してください。
保存食は、一般に行われる検食とは目的が違います。施設長などが喫食前に味や異常の有無を確認するのが検食で、保存食は事後の原因究明のために保管するものです(マニュアルでは保存する試料のことを「検食」と呼んでいるので、用語の使われ方に注意してください)。目的と方法の違いを理解しておくと、混乱を避けられます。
調理従事者の健康管理
調理従事者の健康状態は、食品の安全性に直結します。
下痢、発熱、化膿創などの症状がある場合は、調理作業から除外することが原則です。ノロウイルスやサルモネラ属菌などは、調理従事者を介して食品に付着する可能性があるためです。
毎日の健康状態の把握と記録が求められます。月に1回以上の検便検査(腸管出血性大腸菌の検査を含む。10月から3月まではノロウイルスの検査にも努める)も実施し、保菌者を早期に発見する体制が必要です。
国試では「週に1回の検便」「年に1回の健康診断で十分」といった不適切な頻度を選択肢に入れてくることがあります。日常的な健康観察と定期的な検便検査の組み合わせが基本であることを押さえておきましょう。
調理従事者の衛生教育も重要です。手洗いの方法、器具の洗浄消毒、交差汚染の防止など、HACCPの考え方に基づいた衛生管理の知識を定期的に更新する必要があります。
冷却と配膳の時間管理
調理後の冷却基準も、国試で問われやすいポイントです。
調理後の食品は、30分以内に中心温度20℃付近まで下げる(または60分以内に中心温度10℃付近まで下げる)よう工夫することが求められます。この時間管理により、細菌の増殖を防ぎます。
配膳時間についても基準があります。調理後すぐに提供する食品を除き、10℃以下または65℃以上で管理することが原則です。調理終了後30分以上かかる場合は、温かい食品は保温食缶などで、その他の食品は提供まで10℃以下で保存し、調理終了後2時間以内に喫食することが望ましいとされています。
「1時間以内に20℃」「2時間以内に10℃」といった誤った時間設定を選択肢に混ぜてくるパターンに注意してください。30分で20℃付近、60分で10℃付近という組み合わせを正確に覚えておきましょう。
HACCPの7原則12手順
HACCPは「Hazard Analysis and Critical Control Point(危害分析重要管理点)」の略で、製造・調理の工程で起こりうる危害を分析し、重要な管理点を決めて管理する手法です。抜き取り検査による事後の対応ではなく、工程全体で予防的に安全を確保する点が特徴です。
導入には12の手順があり、最初の5つが準備段階、残りの7つが7原則に対応します。
準備段階の5手順
- HACCPチームの編成
- 製品説明書の作成
- 意図する用途・対象者の確認
- 製造工程図の作成
- 製造工程図の現場確認
7原則(手順6〜12)
- 手順6(原則1):危害要因分析の実施
- 手順7(原則2):重要管理点(CCP)の決定
- 手順8(原則3):管理基準の設定
- 手順9(原則4):モニタリング方法の設定
- 手順10(原則5):改善措置の設定
- 手順11(原則6):検証方法の設定
- 手順12(原則7):記録と保存方法の設定
危害要因は、生物的(細菌・ウイルス)、化学的(洗剤・農薬など)、物理的(異物混入)の3種類です。給食施設では生物的危害が中心で、ノロウイルス、サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌O157、カンピロバクターなどが主な対象になります(大量調理施設衛生管理マニュアルは、ノロウイルス対策に特に重点を置いています)。重要管理点(CCP)は、危害を防止・除去・許容できる水準まで減らすために管理が欠かせない工程で、給食施設では加熱調理が代表的なCCPで、中心温度の測定と記録が日常の業務になります。
特定給食施設との違い
HACCPは食品衛生法に基づく「食品安全」の制度で、大量調理施設衛生管理マニュアルは、その考え方に沿って国が示した通知です。給食施設にはもう一つ、健康増進法に基づく「栄養管理」の側面があります。
特定給食施設は、特定かつ多数の者に継続的に、1回100食以上または1日250食以上の食事を供給する施設で、都道府県知事等への届出が必要です。この基準は、大量調理施設衛生管理マニュアルの適用範囲(同一メニューを1回300食以上または1日750食以上)とは別のものです。100食規模の施設は特定給食施設に当たりますが、マニュアルの適用対象ではありません(ただし、中小規模の施設にもHACCPに沿った衛生管理が求められます。マニュアルのほか、厚生労働省が確認した業界団体の手引書を参考にすることも認められています)。300食以上の施設は、多くの場合、特定給食施設にも当たり、栄養管理と衛生管理の両面で行政の指導を受けます。
aiyolabで聞いてみた
大量調理施設衛生管理マニュアルの数値や基準について、aiyolabのAIチャットで質問すると、厚生労働省の公式マニュアルや食品衛生法を根拠に回答が返ってきます。「75℃1分間の根拠は?」「保存食の温度基準は?」といった具体的な質問をすると、出典つきで確認できるため、国試対策やレポート作成の下調べに活用できます。
大量調理施設衛生管理マニュアルの国試対策では、数値の正確な記憶が合否を分けます。75℃1分間、85℃90秒間、保存食50g程度・-20℃以下・2週間以上といった基準を、実務での意味とあわせて理解しておくことで、選択肢の誤りに気づきやすくなります。温度管理、保存食、調理従事者の健康管理という3つの柱を押さえて、確実に得点につなげましょう。