腎臓の構造と機能、CKDの病態理解につなげる
腎臓の構造と機能、CKDの病態理解につなげる
腎臓は体内の老廃物を濾過し、水分や電解質のバランスを調節する臓器です。この機能が低下すると慢性腎臓病(CKD)へとつながります。CKDの栄養管理を理解するには、まず腎臓がどのように働いているかを知る必要があります。ネフロンの構造と機能を順に見ていきましょう。
ネフロンは腎臓の機能単位
腎臓には約100万個のネフロンがあり、それぞれが独立して濾過・再吸収・分泌を行っています。ネフロンは糸球体、ボーマン嚢、尿細管から構成されます。
糸球体は毛細血管が球状に集まった構造で、ここで血液が濾過されます。濾過された液体(原尿)はボーマン嚢に集められ、尿細管へと送られます。健康な成人では1日に約180Lもの原尿が作られますが、最終的に尿として排泄されるのは1〜2L程度です。残りの99%以上は尿細管で再吸収されます。
糸球体濾過率(GFR)が腎機能の指標
糸球体濾過率(GFR)は、1分間に糸球体で濾過される血液の量を示します。正常値は約120mL/分ですが、腎機能が低下するとGFRは減少します。
CKDのステージ分類はGFRに基づいて行われます。G1ステージではGFRが90mL/分以上で正常範囲ですが、尿たんぱくなどの腎障害の所見があればCKDと診断されます。G2では60〜89mL/分と軽度低下、G3aで45〜59mL/分、G3bで30〜44mL/分と中等度低下が進みます。G4では15〜29mL/分と高度低下、G5では15mL/分未満となり末期腎不全の状態です。
実際の臨床では推算糸球体濾過量(eGFR)が使われます。血清クレアチニン値、年齢、性別から計算され、腎機能の評価に欠かせません。
近位尿細管は再吸収の主役
糸球体を通過した原尿は、まず近位尿細管に入ります。ここでは濾過された物質の約65%が再吸収されます。
グルコースやアミノ酸は近位尿細管でほぼ100%再吸収されるため、通常は尿中に出てきません。糖尿病で血糖値が高くなると、近位尿細管の再吸収能力を超えて尿糖が出現します。
ナトリウムとそれに伴う水分も近位尿細管で大量に再吸収されます。また、濾過されたたんぱく質の大部分もここで再吸収されます。糖尿病性腎症では糸球体の濾過バリアが障害され、たんぱく質が尿中に漏れ出します。近位尿細管の再吸収能力を超えると、たんぱく尿として検出されるようになります。
リンやカルシウムの再吸収も近位尿細管で始まります。CKDが進行すると、リンの排泄が低下して高リン血症を来します。これが骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の出発点となります。
ヘンレループは尿の濃縮を担う
近位尿細管を出た尿は、ヘンレループと呼ばれるU字型の構造を通ります。下行脚では水が再吸収され、上行脚ではナトリウムやカリウムが再吸収されます。
ヘンレループは髄質の浸透圧勾配を作り出し、尿を濃縮する仕組みの基盤となります。この機能により、体内の水分が不足しているときには濃い尿を作り、水分が過剰なときには薄い尿を作ることができます。
ループ利尿薬(フロセミドなど)は、ヘンレループ上行脚でのナトリウム再吸収を阻害します。心不全や腎不全の浮腫管理に使われますが、カリウムも同時に排泄されるため、低カリウム血症に注意が必要です。
遠位尿細管と集合管で微調整
遠位尿細管では、ナトリウムとカリウムの交換が行われます。アルドステロンはこの部位に作用し、ナトリウムの再吸収とカリウムの排泄を促進します。
高血圧の治療に使われるサイアザイド系利尿薬は、遠位尿細管でのナトリウム再吸収を阻害します。カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトンなど)はアルドステロンの作用を抑え、カリウムの排泄を減らします。CKD患者では高カリウム血症のリスクがあるため、使用には慎重な判断が求められます。
集合管は尿の最終調整を行う場所です。抗利尿ホルモン(バソプレシン)が作用すると、集合管での水の再吸収が増え、尿が濃縮されます。脱水時には抗利尿ホルモンの分泌が増えて尿量が減り、水分摂取が十分なときには分泌が減って尿量が増えます。
カルシウムの最終的な微調整も集合管で行われます。副甲状腺ホルモン(PTH)は遠位尿細管と集合管でのカルシウム再吸収を促進します。CKDではビタミンDの活性化が低下し、カルシウム吸収が減少します。これに対してPTHが上昇し、二次性副甲状腺機能亢進症を来します。
CKDの病態は構造と機能の両面から理解する
CKDでは糸球体の濾過機能が低下し、尿細管での再吸収・分泌機能も障害されます。
初期には糸球体の濾過バリアが損傷し、たんぱく尿が出現します。糖尿病性腎症では高血糖による糸球体の過剰濾過が続き、徐々に糸球体が硬化していきます。高血圧による腎硬化症では、細動脈の硬化が糸球体の血流を障害します。
GFRが低下すると、窒素代謝産物(尿素、クレアチニンなど)の排泄が減り、血中濃度が上昇します。これが尿毒症症状の原因となります。また、リンの排泄低下、カリウムの排泄低下、エリスロポエチン産生低下による腎性貧血など、さまざまな合併症が出現します。
CKDステージG3b以降ではたんぱく質制限が推奨されます。これは尿素などの窒素代謝産物の蓄積を抑え、腎臓への負担を軽減するためです。ただし、過度の制限は低栄養やサルコペニアのリスクを高めるため、個別の栄養評価に基づいた管理が必要です。
食塩制限も重要です。腎機能が低下するとナトリウムの排泄能力が落ち、体液貯留や高血圧が悪化します。CKD診療ガイドライン2024では、CKD患者の食塩摂取目標を6g/日未満としています。カリウム制限は、血清カリウム値が5.5mEq/Lを超える場合に考慮します。野菜は水にさらす、茹でこぼすなどの調理法でカリウムを減らせます。
aiyolabで聞いてみた
腎臓の構造や機能、CKDの栄養管理についてさらに詳しく知りたいとき、aiyolabのAIチャットに質問すると、食事摂取基準2025年版やCKD診療ガイドラインを根拠に回答が返ってきます。「CKDステージG3bのたんぱく質制限量は?」「高カリウム血症を防ぐ調理法は?」といった具体的な疑問に、出典つきで答えてくれるので、実習レポートや栄養指導の準備に活用できます。
まとめ
ネフロンは糸球体、近位尿細管、ヘンレループ、遠位尿細管、集合管から構成され、それぞれが濾過・再吸収・分泌の役割を分担しています。GFRは腎機能の指標であり、CKDのステージ分類に使われます。CKDでは糸球体と尿細管の両方が障害され、窒素代謝産物の蓄積、電解質異常、貧血などが生じます。栄養管理では、たんぱく質・食塩・カリウムの適切なコントロールが求められます。