食品添加物の規制と安全性、エビデンスベースで整理した

食品添加物安全性ADI食べ物と健康

スーパーで手に取る食品の多くに「保存料」「着色料」「甘味料」といった表示があります。「添加物が入っているから危ない」と考える方もいれば、「国が認めているなら大丈夫」と思う方もいるでしょう。実際のところ、食品添加物の安全性はどのように担保されているのでしょうか。今回は、規制の仕組みと科学的根拠を整理します。

食品添加物の分類と法的位置づけ

食品添加物は食品衛生法で「食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用するもの」と定義されています。日本では大きく4つに分類されます。

指定添加物は、内閣総理大臣(消費者庁)が、食品安全委員会による安全性の評価を受けて指定したもので(2024年3月までは厚生労働大臣)、約480品目が認められています。アスパルテーム(甘味料)、ソルビン酸(保存料)、タール色素などが該当します。

既存添加物は、1995年の食品衛生法改正以前から使われてきた天然由来の添加物で、327品目(2025年8月時点)がリスト化されています。クチナシ色素やカラメル色素などがこれにあたります。天然由来だから必ずしも安全とは限らず、実際に安全性に疑義が生じたものはリストから削除される仕組みです。

このほか、天然香料と一般飲食物添加物があります。天然香料はバニラ香料など約600品目、一般飲食物添加物は寒天や果汁など通常食品としても使われるもので、これも名簿が定められています。

ADI(一日摂取許容量)の設定プロセス

添加物の安全性評価で中心となるのが**ADI(Acceptable Daily Intake:一日摂取許容量)**です。これは「人が一生涯にわたって毎日摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される量」を体重1kgあたりで示したものです。

ADIは動物実験で求めた**無毒性量(NOAEL)**に安全係数(通常100)を適用して算出します。安全係数100の内訳は、動物とヒトの種差で10倍、個人差で10倍という考え方です。たとえば、ラットで無毒性量が体重1kgあたり10mgだった場合、ADIは0.1mg/kg体重/日となります。

この評価は食品安全委員会が行い、消費者庁が使用基準を設定します(2024年3月までは厚生労働省)。国際的にはFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)やCodex委員会が基準を策定しており、日本の評価もこれらと整合性を保ちながら進められています。

実際の摂取量とマーケットバスケット方式

ADIが設定されても、実際にどれだけ摂取しているかを把握しなければ安全性は担保できません。日本ではマーケットバスケット方式による一日摂取量調査が定期的に実施されています。

この方法では、実際に流通している食品を購入し、一般的な食事パターンに基づいて添加物の摂取量を推定します。マーケットバスケット方式の調査は年度ごとに対象の用途群を替えて行われており、たとえば令和2年度は保存料(10種類)と着色料(16種類)が対象で、ADIが設定されているものの推定一日摂取量はいずれもADIを大きく下回っていました。

たとえば保存料のソルビン酸では、ADIが25mg/kg体重/日(体重50kgで1,250mg/日)に対し、推定摂取量は1日あたり数mg程度です。甘味料のアスパルテームも同様に、ADIを大きく下回る摂取量にとどまっています。

ただし、この調査には限界もあります。個人の食習慣によって摂取量は大きく変動しますし、特定の加工食品を多く食べる層では平均より高くなる可能性があります。そのため、継続的なモニタリングと基準の見直しが重要です。

「添加物は危険」言説とエビデンス

「食品添加物は発がん性がある」「子どもに悪影響がある」といった情報を目にすることがあります。こうした主張にはどの程度の根拠があるのでしょうか。

まず、発がん性については国際がん研究機関(IARC)の分類が参考になります。たとえばタール色素の一部は動物実験で発がん性が示唆されたため使用禁止になりましたが、現在使用が認められている添加物で、食品安全委員会がADIの範囲内での使用に懸念があるとしているものはありません。なお、アスパルテームについては、2023年7月にIARCがGroup 2B(ヒトに対する発がん性が疑われる)に分類しましたが、JECFAはADIを維持しています。

「合成添加物より天然添加物の方が安全」という認識も科学的根拠に乏しいものです。天然由来でも毒性を持つ物質は多く存在します。既存添加物のアカネ色素は天然由来でしたが、動物実験で腎臓への発がん性が確認され、2004年に使用禁止となりました。

一方で、添加物の複合摂取による影響(カクテル効果)については、現在の評価手法では十分に検証されていないという指摘もあります。単一物質のADI評価だけでは不十分ではないかという議論は続いており、今後の研究課題です。

国際的には、JECFAなどがADIを設定し、その範囲内で使用される限り健康影響の懸念は小さいという考え方で評価しています。

規制と表示制度の実際

日本では食品衛生法に基づき、添加物の使用基準と表示基準が定められています。使用基準では、対象食品や使用量の上限が物質ごとに規定されています。

表示については、原則としてすべての添加物を物質名で表示する義務があります。ただし、用途名併記が必要なものもあり、保存料、甘味料、着色料、酸化防止剤などは「保存料(ソルビン酸)」のように用途と物質名を併記します。

キャリーオーバーや加工助剤など、表示が免除される場合もあります。キャリーオーバーとは、原材料に含まれていた添加物が最終製品では効果を発揮しない程度の微量しか残らない場合です。たとえば、醤油に含まれる保存料が煮物に使われた場合などが該当します。

添加物の表示ルールも見直されてきました。2020年7月の食品表示基準の改正では、用途名・一括名から「人工」「合成」の語が削除され、2025年3月には、栄養強化の目的で使用される添加物が表示免除の対象から外れました(経過措置は2030年3月まで)。消費者が正確な情報に基づいて選択できる環境整備が進んでいます。

aiyolabで聞いてみた

食品添加物の安全性評価や摂取量について、もっと詳しく知りたいときはaiyolabのAIチャットが役立ちます。「ソルビン酸のADIはどう設定されているか」「マーケットバスケット方式の最新データは」といった質問をすると、食品安全委員会の評価書や厚生労働省の調査報告を根拠に回答が返ってきます。出典つきで確認できるので、レポート作成や栄養指導の下調べに使えます。

まとめ

食品添加物の安全性は、動物実験に基づくADI設定と、実際の摂取量調査によって二重に担保されています。現在使用が認められている添加物は、国際的な評価基準に照らしても適切に管理されていると言えます。ただし、複合摂取の影響など未解明の部分もあり、継続的な研究と規制の見直しが必要です。管理栄養士として、科学的根拠に基づいた情報提供を心がけたいものです。

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